クァトロ・エスコーラ

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 砂嵐を抜けてきたジープが二台。運転する黒人が二人、女性が二人、そして銃を持って周りを警戒する兵が二人。 「マリア、もうすぐ時機を得るぞ」  黒髪を無造作に後ろで束ねている、二十歳を少し出たかどうかの女性が年少の娘に話し掛ける。  場に似つかわしくないドレス姿のその娘とは対照な、黒い軍服に身を包んでいる。  階級章は中尉、士官学校卒業からの新米のようにも考えられる。 「ようやくなのですね、ユーコ」  十代後半の彼女、混血の奇跡を体現したような美形だ。  隣の黒髪も劣りはしない、着飾れば絶対に映えるというのは多くの者が賛同するだろう。 「日本が戦場になる」  ――私はこの時が来るのを待っていた。五年だ、あの人の意志を尊重し耐えてきた。だが今は違う、これは私達の意志だ。  日本を分割され戦争の最中に志願して国防軍に連なっていた悠子。  国防軍の将校下士官兵、死者以外は全てが退役しその軍籍ごと抹消された。  移動軍学校の面々のみが、やや遅れてから除籍にサインすることになる。  少尉候補生は簡単だ、有無を言わさずに押し付けてしまえば良い。image=498307301.jpg
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