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「Siriに質問をしていたの。これは本の形をしたタブレット。しおりは音声入力マイクよ。いま、見た目をアナログっぽくした新製品のモニターをやっているの」
はぁ、と僕は生返事を返す。ぼそぼそと呟いていた彼女に、何をしているのかと質問したらこの返答だった。
まったくの予想外。
「あ! その椿には触らないで」
彼女が声をあげる。びくりとして、僕はちゃぶ台の上にある椿から手を引いた。
「それ、ルーターだから。インテリアとしても使えるお花型ルーター。お正月版」
「じゃあ、そこの湯呑みもひょっとして?」
彼女の前に湯呑みがひとつある。これも、ただの湯呑みに見せて、きっと違うのだ。
僕だって学習する。
しかし。
「は?」
彼女は阿呆でも見るように冷たい目で僕を見た。
「これはただのお茶よ。それ以外の何に見えるの?」
それきりで僕は黙らざるを得なかった。
彼女もそれきりでタブレットいじりに戻っていく。
とても腑に落ちない冬の夜だった。
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