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序章
三間坂琴葉は、ものも言わずに桜の箔が押された重箱をテーブルの上にひっくり返した。
無残に散らばったのは、鰻巻き卵に菜の花のおひたし。
さわらの焼き物に葉しょうが、タケノコとわかめの炊き合わせには、青いエンドウがあしらってあったようだ。
ご飯は一口大の俵型で、おにぎりの側には、飾ってあったのだろう桜デンブやごまが散らばっている。
「ああ、琴葉さん」
まだ箸もつけていない弁当を台無しにされた橋田陸奥は、切なげに眉をしかめるが、
「……もったいない」
陸奥が漏らした言葉に、琴葉の悪びれない声が重なる。
「私はミルクティが飲みたいの。だったらお昼もパンに決まっているでしょう」
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