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ある年の夏、私の人生は真っ暗闇に溶け込んだ。
「雛形奏さん、貴方は癌です。
まだそこまで進行していないようですが、検査などの為、今日からしばらく入院していただきたいと思います。よろしいですか?」
「はい」
「お母さんも、よろしいですか?」
「..はい。」
「ではここからはお母さんだけ残ってもらって、奏さんは看護師が誘導しますので部屋にー」
癌、か。
実感沸かないなー。
..死ぬのかな、私。もう少し人生楽しんどけば良かった。本当に後悔しかないや。
あーあ。高校生満喫しとけばよかった。
でも、まだ進行していないみたいだし、大丈夫だよね?
なんて思っていたら、いつの間にか病室のベッドの上にいた。
この部屋は4人部屋で、ほとんどの人は年配の方ならしい。まぁ見た感じ雰囲気は良さそうだ。
「あら、新入りさん?よろしくねー。私は佐藤初枝っていいます、ハツさんってよんでくださいねー。」
「私は雛形奏といいます。こちらこそよろしくお願い致します。」
「あらあら、そんなにかしこまらなくてもいいのよー。私たち、もう友達なんだからねっ!だから敬語は使わなくていいからねー。」
「はいっ!..あ、ありがとう!」
良かった~、優しい人だー!なんか涙出てきそう。あと二人、友達になれるかな。
「あら、あそこに居るのは奏ちゃんのお母さん?」
「うん、そうだよ~。
お母さん、どうしたの?」
私はどう接したらいいのか迷いながらも母に駆け寄った。
「先生が、奏と話したいって。お母さん、これからあなたの服取りに行ってくるから、また来るね。」
「ありがとう、いってらっしゃい!」
私は笑顔で母を見送った。笑わない方が良いかと思ったけど、あんな泣きはらした跡を見たら笑顔を作らずにはいられなかった。
「ごめんね、お母さん。」
私は聞こえるか聞こえないかぐらいの声でそういった後、診察室へ向かった。
何となく診察室に行くのが怖くて、少し遠回りをして行った。
それがきっかけであんなことになるなんて、全く予想してなかった。
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