第1章

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携帯の画面に映っていたのは、もう何年も見たことのなかった、瞳から流れるしょっぱい雫だった。 黒かった画面が明るくなり、ポップアップが表示される。 『君の気持ち、嬉しかったのだけど、申し訳なくなりました。』 そりゃそうだろう。まだ酒も飲めない年齢の私と、干支をふた回りほどした貴方では。 酔わないと話せない口下手な貴方が、何杯も頼んだハイボール。貴方がハイボール、と頼むたびに、なんだかそれが大人の証のように聞こえた。 『あと5年経ったら、また考えたのだけれどね。』 ハイボールが飲めるようになったら。必ずまた捕まえに行きますから。
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