第1章

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 『去年は会えなくて残念だったよ』  『今年は会いたいね』  年賀状には、そんな言葉が踊っていた。この差出人たちは、去年も同じことを書いている。  その前の年も。  毎年ずっと。  そして多分、来年も同じコメントだろう。  彼女たちは既婚者だ。  そして職業は、母。  家事も兼業している、と表現して差し支えないくらい、乳幼児のお母さんという仕事は大変らしい。  それを否定するつもりは毛頭ない。育児ブログも溢れているから、理不尽な子どもの無茶ぶりを私でも面白く容易に垣間見ることができる。  本当に大変なのだと思うし、尊敬も尊重もする。  年賀状の台詞だって、毎年、本心から書いているんだろう。実行できる余裕がないんだと理解している。  ただ、淋しかった。  彼らに相手にしてもらえないことが、ではない。  私を振り回すような身近な存在がいないから…ということでもない、と、思う。  私は。  私の中で止まってしまった時間を思って淋しく感じているのかもしれない。  同級の『お母さん』たちが着実に人生の階段を上がっているその同じ時間を過ごしながら、自分が『おばさん』にすらなれていないことに、私は最近気が付き始めていた。
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