第1章

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 オバサンになりたいという訳では決してないのだけれど、おばさんを自覚するようなチャンスが皆無な毎日というのも、この年になると不安だ。  若振っているつもりはないし、オネエサンと言われたい訳でもない。  年相応の振る舞いも身に付いている。  それでも、私は『おばさん』ではなかった。  強がっているのではなく、『お母さんではない』のと同じ感覚で『おばさんではない』のだ、私の中では。  そして、『おばさんになれていない』のは、『奥さんになれない』とか『お母さんになれない』という立場に比べて、より切実で切迫した問題点に感じられた。  奧さんもお母さんも、一人ではなれない。だから、私がなれなくても仕方がない。  でも、おばさんなら一人でもなれる筈であり、つまり私単独でもなれる訳で、それでもおばさんとしての意識が育っていないというのは、怠慢以外に理由がない。  派遣社員で、お気楽な立場のままあちこち転々としているのがいけないのだろうか。  それとも、実家暮らしだから?  彼氏がいないから?  打ち込めるような趣味がないから?  貯金がないから?  将来が曖昧だから?  その、すべてが原因なのだろうか。
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