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寝姿
部活の合宿で民宿に泊まった。
個室なんてものはなく、大きめの部屋に十数人が雑魚寝だ。
しかし、僅か十人ちょっととはいえ、一応二桁の人間が集まると、色んな面が見られるよな。特に寝てる時は。
いびきがうるさい奴。最悪な歯軋りの奴。寝相が酷い奴。寝言を言う奴。寝つきの早い遅い…十人十色って言葉があるけど、ホント、多種多様だよな。
全員の寝姿を眺め下ろし、俺はつくづくとそんなことを考えていた。
* * *
「いやホント、マジありえねー」
「夜中にアレ見て俺は気ィ失うトコだった」
起きると、朝っぱらからみんなが何やら揉めている。
「どうした? 何かあったのか?」
気軽に問うと、全員が一斉に俺を見た。
「どうもうこうも、何かあったとしか思えないのはお前だよ」
俺を囲むようにみんなが詰め寄って来る。そしてとんでもないことを口にした。
「お前、昨日、完全に幽体離脱してたぞ」
え?
「夜中に目が覚めたら、部屋の中にボーっと白いモンがいて、よく見たらお前の顔してた」
ええ?
「隣のコイツ叩き起こして確認させたらやっぱりお前で、さらによく見たら、白いモンはお前の口から伸びてたし」
えええ?
「お前、アレ絶対ヤバいって! 医者…じゃなくて、何か、寺とか神社とか祈祷師とか、そういうトコ行って見てもらった方がいいって。マジで!」
そんなことを言われても…いや、もしかしたらと思い当たる節はある。
昨夜、確かに俺はみんなの寝ている様子を見ていた。同じ目線ではなく、かなり高い位置から。
寝惚けてそう感じているのだと思っていたけれど、実際上から見ていたんだとしたら辻褄が合う。
しかし、…うーん。
十人十色の寝姿。みんな色々と癖があるなと思って見てたけど、まさか一番癖があるのが俺だったとは。
とりあえず、合宿から帰ったら色々さがして、そういう、霊能者さんを訪ねてみよう。
寝姿…完
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