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 貴女は自由を得たのだろうか。  貴女は言っていた。  何かから逃げても他の何かから逃げることはできない、と。  それすらも覆すために、貴女は貴女を捕らえていた檻から飛び立つことで逃げたのだろうか。  例え蝋が溶けようとも、その自由の可能性を信じて、貴女はイカロスになったのだろうか。  しかし、貴女が自由を得たところで、貴女が逃げ出したことで。貴女を愛する人々はどうすればよいのだろうか。  それこそ自由とは程遠い、暗い闇の牢獄に繋がれてしまう。  貴女の母親は。シングルマザーとして貴女を育ててくれた母親はどうなるのか。  そして私は。貴女をあんなにも愛していた私はどうすればよいのか。今も貴女にこんなにも焦がれている私はどうなるのか。  貴女が飛び立ち、貴女のいない世界で、私の世界は完全に壊れてしまった。  残されたのは記憶の残滓と、罪の欠片。  貴女を失った時ではない。貴女と過ごしたあの時を思い返すと、私は無性に泣きたくなるのだ。  夜明けも近づいた。  私は瞼を開ける。零れた雫は空へと上り、貴女の思い出を集めて飛んだ。  あの時を思い返す。貴女とのあの時を。  貴女と交わした会話。  一緒に読んだ雑誌。  色、匂い、声、笑顔。  後に何度も読み返したメール。  貴女との絆。  …………メール。  貴女のメール。  「あっ」  私は真相に気がついたが、時は既に遅すぎた。私には翼すら無かった。
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