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その日、私は一生分の運を使い果たした。
突然目の前に現れた紳士。落ち着いた言動とは裏腹に、容姿は爽やかな短髪、長伸、切れ長な瞳から大人の余裕を漂わせ、なによりも男前だった。
後で歳を聞いて驚いた。
『三十半ば位だと思いました。』
私がそう言った時の、彼の嬉しそうな顔ったら……思い出すだけで笑ってしまう。
その晩、私は彼と一夜を共にした。
『君とこうなってしまった事を……、いつか後悔しそうだよ』
情事の後、寝物語を囁いた彼。
その左手の薬指にはシルバーのリング。
それは……、私の想像の範囲内だった。
私の持っている運は、こんなモノだと。
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