第1章

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その日、私は一生分の運を使い果たした。 突然目の前に現れた紳士。落ち着いた言動とは裏腹に、容姿は爽やかな短髪、長伸、切れ長な瞳から大人の余裕を漂わせ、なによりも男前だった。 後で歳を聞いて驚いた。 『三十半ば位だと思いました。』 私がそう言った時の、彼の嬉しそうな顔ったら……思い出すだけで笑ってしまう。 その晩、私は彼と一夜を共にした。 『君とこうなってしまった事を……、いつか後悔しそうだよ』 情事の後、寝物語を囁いた彼。 その左手の薬指にはシルバーのリング。 それは……、私の想像の範囲内だった。 私の持っている運は、こんなモノだと。
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