正月の珍客

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 訳も分からずガタガタ、震えていると、どこかから気持ちの良い琵琶の音が聞こえてきた。  年明けとはいえ、こんな時間にいったい、誰が琵琶を奏でているのだろうか。 「そんなに怖がらなくてもいいのよ」  怖い男の後ろから琵琶を奏でる美しい女性が優しくY氏に言った。彼女は微笑みながらY氏の喉元を優しく撫でる。彼女からは高貴な香りが漂いY氏は思わずうっとりした。  少し落ち着きを取り戻したY氏は彼らが何者なのかを考えた。年齢もバラバラな七人。強盗にしてはあまりにも大胆すぎるではないだろうか。それに、彼らはどこかで見たことがあるような気がしていた。ただ、どこの誰だったのか思い出せない。 「兄さん。どうしたの?そんなところで突っ立っていないで一緒に食べよう。ほらほら」  最初、家に上がり込んできた老人がニコニコしながらY氏を手招きする。一緒にも何も、おせちも酒も全て、Y氏のものであるのだが。腹が立つ反面、彼らの和やかな雰囲気に促され、Y氏は追い出すことも忘れて一緒になって酒盛りをしてしまう。酒を飲み、うまいものを食べ、美しい琵琶の音色に耳を傾ける。何より不和もない雰囲気がなによりも贅沢に感じられた。酒を飲んでいたせいもあってか、Y氏は時が経つのも忘れていつの間にか寝てしまった。  朝、携帯の振動音で目を覚ましたY氏は部屋を見回すも、全てが夢幻であるかのように消えていた。  あれは夢ではない。証拠に綺麗に片づけてあったが、酒瓶を開けられ、おせちも食べ終わっていた。それに、コタツの上に封筒が一つ、添えられていた。 『楽しい時間をありがとう。恵比寿』  手紙と一緒に、丁寧に折り畳まれた七福神の絵がある。Y氏は絵と手紙に書かれた名前を見て思い出した。彼らは七福神だ。全員、七福神にそっくりだったのだ。まさか、新年早々に七福神がやってきた。嘘みたいな話にY氏はすぐには信じられなかった。だが、悪い気はしない。  今年は、何かいいことが起こるのではないか。そんな予感が頭を過ぎるのだった。
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