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おそらく、否、なんとなく、確実に、彼らはその身体同士を繋げている。
それを巧妙にトレンチコートが隠している。
同性の俺からすれば都市伝説のような話だが、男同士でも身体を繋げることができるらしいことは知っている。
それが今。まさに今。日常の満員電車の中で目撃するなんて、思いもしなかったが。
ダサいトレンチコートに遮られて見えないが、あれは確実に挿ってる。
色白の男の水面張力全開の雫を宿した目が、「今、男のモノに犯されている」と、俺に語りかけてくる。
でも、ここで騒ぎ立てる俺ではない。
出勤ラッシュの満員電車でヤってんだ。
同意の上の行為であることは明白だ。
男の身体で、こんな場所で、互いの協力なしに至せるわけがない。
痴漢同士、悦んでいるのなら、他人に迷惑を掛けない範疇で楽しめばいいと思う。
しかし、だ。
ふたりの関係がどんなものかは知らないが、色白の男の瞳は、俺に助けを乞うように見ているように思えるし、「お前、AV見すぎじゃね?」と引かれるかもしれないが、俺に「コイツ下手だから、アンタのでっかくて堅いヤツ、俺に突っ込んでイカせてよ」と、言っているような気がする。
なんとなく。ごくなんとなく。
そんなことを考えていたら、停車駅に着き、また列車が動き出した。
昇降する人並みに押されて、意図せず男たちとの距離が少し縮まった。
俺はだんだん焦ってきた。
次の区間で、大きなカーブを通過する。
すると、車内全体が遠心力で大きく揺れるのだ。
こんな満員電車で身体を繋げられていたとしても、蠕動は無理だろう。
ただ、今までの経験上、ただ、体内に納めているだけでも快感は得られる。
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