5人が本棚に入れています
本棚に追加
「おやまぁ、珍しいお客さまだ…いよいよ、わしにお迎えがきたのかな…」
「……あんたに用はないよ……」
虚ろな目を一瞬だけ老婆にむけるとそう言って、男はカウンター席に腰をおろす。
アルコールを注文すると老婆からまた声がかかる。
「…探し物をしているね……」
「…………」
「また難儀なものを……」
「……っ!……」
その瞬間、虚ろだった男の目に怒りがともり、店のガラスというガラスがすべて砕け、明かりが消えた。
怒号や悲鳴が店内に響くなか、男と老婆だけは落ち着いていた。
「……最近森が妙に騒がしいよ…あんたの探し物かもしれないねぇ…」
「……」
男は暗闇でパニックになっている店内を何事もなかったように 出ていった。
最初のコメントを投稿しよう!