☆ 宝田小枝子

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 そんな日が続いたある日、高校入学用に用意した書類で、私と小枝ちゃんがまだ同じ戸籍にいることを知った。  結婚するって聞いたのに……。    今は離れているけれど、私たちはまだ家族だ。  そんなか細い、いまにもプツリと切れてしまいそうな希望の糸に、私はしがみついた。  きっと何か理由がある。  きっと迎えに来てくれる。  もしかしたら、どこかで私の姿を見てくれているのかも知れない。  そう思えば、誰もいない家に帰ることもさして苦痛に感じなかったし、高校生活を充実したものにしようと、頑張ることもできた。  けれど現実の糸は、もうとっくに切れていて、私は先の無い垂れ下がった糸を大事に握り締めているだけだった。
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