☆ 泉さんの声色

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 この声色は――。  だんだん、分かって来た。  泉さんが「好きです」って囁く時の、泉さんの声色。  この日のこの声色は、何かがあって心が揺れている時のもの。  不安なことがある時のもの。  だから、私も背中に手をまわした。 「私もです……、好き、です」  大丈夫です、と声に出さずに呟きながら、肩におでこを当てた。  少しの間そうしていると、泉さんはゆっくりと抱擁を解いて、今度は私のおでこに唇を当てた。 「ここの近くで夕飯でもいいですか?   その後……私、署に戻ることになっていまして……」  あ……、この後も仕事だったんだ。  泉さんは刺された後もすぐに職場に復帰し、ほとんど休みなく働いている。  警察官は休みがないのが当たり前、とは聞いているけれど、本当に忙しい。  社会人なんだな。しかも警察官なんだな。って、嫌でも認識してしまう。  その上、滅多に仕事の話はしない。  だからこそ、時々無性に心配になる。  危ない目に遭わないだろうか、無理はしていないだろうか……って。    簡単な夕飯を食べた後、私の部屋の前まで一緒に歩いた。  別れ際、頬にキスされて、ドキドキしている間に、もう廊下の先まで移動している。  そして夜だから小声で「好きでーす」って言いながら手を振ってくれた。  この時の『好きでーす』は『リセットできました』かな。  その顔を見ると、私も安心して手を振り返すことができる。  今度会う時までどうか何事もありませんように……と祈りながら。
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