0人が本棚に入れています
本棚に追加
そこまで近くはない距離にいるのに、すぐ側で囁かれてる感じがして、背筋が震えた。
速まる鼓動も呼吸も整え、ゆっくりと後退りをする。
その間も耳元ではお婆さんらが交互に「紅茶はいかが?」と、繰り返している。
タイミングを見計らい、一気に踵を返すと広場を走り抜ける。
なるべく広場から遠ざかるように、走った。
しかし、
「紅茶はいかが?」
声が、聞こえた。すぐ、側で。
通り過ぎる景色の一部に、お婆さんが見えている気がする。
「紅茶はいかが?」「紅茶はいかが?」「紅茶はいかが?」「紅茶はいかが?」「紅茶はいかが?」
走っても走っても、公園を出ても、その声はずっと近くで聞こえてきた。
建物の間や、街灯の下、行くところ全てにお婆さんが見える。
最初のコメントを投稿しよう!