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弐:雨雲に覆われし水無月、ナオキ妖しき美少女に再会し仰天す
6月も中旬に入り、本格的に梅雨がやってきた。
今日もジトジトと雨が降る。
ナオキはコウジとヒデの誘いを断り、授業が終わると同時に帰路についた。
麻生美由紀が死んでから2ヶ月が過ぎている。
あれ以来、ナオキはマジック・マッシュルームには手を出していない。
あれは、恐らく、多分、きっと、間違いなく、幻覚だったのだ。
ナオキにはそう思い込む以外になかった。
だが、そんなナオキを嘲笑うように、学校に奇妙な噂が流れ出していた。
第一音楽室で、女生徒の幽霊が夜な夜な『別れの曲』を弾くという。
ほとんどの者は面白半分に噂話に興じているだけだが、面白くない人間が少なくとも3人はいる。
他ならぬナオキとコウジとヒデだ。
だが、コウジとヒデはまだいい。
奴等は押さえてただけだ。
(犯っちゃったのだ、俺は……)
傘を差し、下を向きながらゆっくり歩くナオキを、後ろから3人組の女生徒が追い抜いていく。
「ねえ、知ってる? 例の幽霊、最近、曲が変わったんだって」
女の子達の会話が聞こえてくる。
「あ、それ知ってる。今はモーツァルトなんだってね」
「うん。それですっごい上手いんだって!」
なんだか噂に尾ひれが付いてどんどん広がっていく。
(いい加減にしやがれ!)
ナオキは怒鳴りそうになるのを懸命にこらえた。
ナオキがネットカフェで適当に時間を潰して家に着いたのは午後7時を少し過ぎていた。
母親が用意しておいてくれたカレーを胃に流し込み、さっさと2階の自分の部屋に行く。
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