序:霧雨降る春の夜、ナオキ音楽室にて妖しき美少女とたわむれる

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序:霧雨降る春の夜、ナオキ音楽室にて妖しき美少女とたわむれる

 サイケデリックな空気の中でナオキは遊んでいた。  悪い気分じゃない。  身体がフワフワ浮いてるような感じもするし、地面がグラグラ揺れてるような気もする。  目を閉じると、肉体の感覚が一瞬にして消滅し、意識だけが宇宙空間を漂っているような妖しい気分になる。 「へへ、結構くるな」  コウジがニヤニヤしながら言う。 「でも5千円はちょっと高くねぇか?」  ヒデが締まりの無い顔で文句を付ける。  ナオキは2人の会話を聞きながら、宙を彷徨っている。  ”来てる”のはわかるが、かと言って精神状態がおかしいかと言われれば、そんなこともない。  普通のことを普通に考えられるのに、普通じゃないことも普通に考えられる。  そんな不思議な気分であった。  3人とも本格的な非行少年一歩手前のエセ不良である。  麻薬や覚醒剤はさすがに恐くて手を出す気にならない。  今日は、コウジが中学時代の先輩から買ってきたマジック・マッシュルームを試している。  中毒性も無いし、人体に害も少ないと言うが、これはコウジの先輩の言葉だから鵜呑みには出来ない。  が、いずれにしても麻薬や覚せい剤に比べれば比較的安全ではあろう。  既にどっぷりと日が暮れている。  その暗い教室で、3人は小さなビニール袋に入った乾燥キノコを食べた。  コウジが先輩に言われた通り、グレープフルーツジュースで無理やり胃に流し込んだ。  マジック・マッシュルームは食後30分くらいで利き始め、4~5時間効果が持続すると言われている。  巷でよく言われているような幻覚は今のところ見えていない。
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