弐:雨雲に覆われし水無月、ナオキ妖しき美少女に再会し仰天す

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「ねえ、男の子と女の子、どっちがいい?」 「お、女の子がいいな」 「えーっ? 私、男の子がいい!」 「あ、いや、男の子でもいいけどね」 「うふ、やっぱり優しいんだ」  ちが~う!  そうじゃない。  そもそも男の子か女の子かって、そういう問題じゃねぇだろ?  大体生まれてくる子は人間なのか? 幽霊なのか? どっちなんだ?  もし人間だったら俺が育てるのか?  そしたら戸籍とかどうすんだ?  母親は幽霊ですって言うのか?  産婦人科は幽霊でも面倒見てくれんのか?  幽霊って保険きくのか?  幽霊でも母子手帳とかもらえんのか?  ううう、わけわからん。 「あ、私そろそろ行くね。今日も頑張って弾かなきゃ」 「弾くって、ピアノか?」 「うん。胎教にはモーツァルトがいいんだって。私一生懸命練習したんだよ」 「なるほど、それでモーツァルトにしたのか」  って、感心してる場合じゃねぇ……    美由紀はスウッと横に平行移動して、壁をすり抜け、部屋を出て行った。  ナオキはベッドの上に大の字になって大きな溜息を付いた。  いったい、どうなっちゃってるのか?  天井を見ながら考える。  どう考えてもわからない。  うつ伏せになって考える。  いくら考えてもわからない。  ごろごろ寝返りを打ちながら考える。  考えれば考えるほどわからない。 「ああ、めんどくせぇ。もう考えんのやめた!」  ナオキはヤケになるより他に仕方がなかった。  こうなったらもう、全てをあるがままに受け入れるしかない。  ジタバタするのはやめだ。    窓を開け、外を眺めると、相変わらず霧のような細い雨が降っていた。
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