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「ねえ、男の子と女の子、どっちがいい?」
「お、女の子がいいな」
「えーっ? 私、男の子がいい!」
「あ、いや、男の子でもいいけどね」
「うふ、やっぱり優しいんだ」
ちが~う!
そうじゃない。
そもそも男の子か女の子かって、そういう問題じゃねぇだろ?
大体生まれてくる子は人間なのか? 幽霊なのか? どっちなんだ?
もし人間だったら俺が育てるのか?
そしたら戸籍とかどうすんだ?
母親は幽霊ですって言うのか?
産婦人科は幽霊でも面倒見てくれんのか?
幽霊って保険きくのか?
幽霊でも母子手帳とかもらえんのか?
ううう、わけわからん。
「あ、私そろそろ行くね。今日も頑張って弾かなきゃ」
「弾くって、ピアノか?」
「うん。胎教にはモーツァルトがいいんだって。私一生懸命練習したんだよ」
「なるほど、それでモーツァルトにしたのか」
って、感心してる場合じゃねぇ……
美由紀はスウッと横に平行移動して、壁をすり抜け、部屋を出て行った。
ナオキはベッドの上に大の字になって大きな溜息を付いた。
いったい、どうなっちゃってるのか?
天井を見ながら考える。
どう考えてもわからない。
うつ伏せになって考える。
いくら考えてもわからない。
ごろごろ寝返りを打ちながら考える。
考えれば考えるほどわからない。
「ああ、めんどくせぇ。もう考えんのやめた!」
ナオキはヤケになるより他に仕方がなかった。
こうなったらもう、全てをあるがままに受け入れるしかない。
ジタバタするのはやめだ。
窓を開け、外を眺めると、相変わらず霧のような細い雨が降っていた。
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