序:霧雨降る春の夜、ナオキ音楽室にて妖しき美少女とたわむれる

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「あれぇ? なんかピアノの音が聞こえるぞ」  ヒデの言葉を聞いて、ナオキとコウジも耳を澄ませた。 「お、本当だ。ありゃ『別れの曲』だ」  コウジがよろよろしながらピアノの音に合わせて身体を揺らす。  ショパンの『別れの曲』で踊るヤツも珍しい。  だが、ナオキも自分の身体が勝手に音に合わせて揺れているのに気が付いた。  なかなかイイ感じじゃないか。 「やっぱ幻聴かな?」 「そりゃ、この時間に音楽室でピアノ弾くヤツなんていねぇだろ?」 「でもよぅ、3人揃って同じ幻聴聞くってのも妙じゃねぇか?」   「そんじゃぁ行ってみるか」  3人は教室を出て3階の第一音楽室に向かう。  3人とも足取りがフラフラしている。  灯りが全て消えた校舎の中で、なぜか”非常口”の緑のランプだけが灯っていた。  音楽室に近づくにつれピアノの音が段々と大きくなっていく。 「こりゃやっぱ幻聴じゃないっぽいぜ?」 「ちっと中見てみよう」  ヒデがそう言いながら、音をさせないように少しずつドアを開ける。  そっと中を覗き込むと、ピアノを弾いているセーラー服の後姿が見えた。  ほとんど明かりが無いはずなのに、なぜかその女生徒の姿ははっきり見える。  多分”キノコ”のせいだろう。 「おい、あれ麻生じゃないか?」  コウジが小声で囁く。  「うん、多分そうだ」  ヒデも頷く。  麻生美由紀。2-Bの女子だ。  ナオキとは1年の時に同じクラスで隣の席になったこともある。  学年で五本指に入る美少女だ。   「おいナオキ、おまえ1年の時、麻生のこと好きだって言ってたよな?」 「バ、バカ言え。ちょっと可愛いなって言っただけだろ」 「犯っちまおうか」  コウジが大胆なことを言う。 「そりゃいくらなんでもヤバくねぇか?」 「なにビビってんだよ? そんなだから村井達になめられちまうんだぜ」  「そうそう。それにこんな時間に一人でガッコにいるなんて、犯られても文句言えんぜ」  ためらうナオキをコウジとヒデが煽る。
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