6人が本棚に入れています
本棚に追加
「私ね、しばらくの間みんなに別れの曲を弾いてから、それから”上”に行こうと思ってたの」
「上?」
「うん。上。よくわかんないけど、上に行かなくちゃいけないみたいなの」
「そ、そうか、残念だけど、仕方がないな。う、上に行っても元気でな」
ナオキがしどろもどろに言うのを美由紀は面白そうに見ている。
「でも、やっぱりもう少しこっちにいることにしたの」
「な、なんで? いや、俺もお別れしたくはないけど、やっぱり上に行ったほうがいいよ。うん」
「ホント? ホントに別れたくない?」
美由紀の目がキラキラと輝きだした。
「いや、だから、その、なんだ、残念だけど仕方が無いよなぁって」
ナオキの言葉を無視するように美由紀は俯いて目を伏せた。
「ナオキ君、あのね……」
「な、なんだよ?」
美由紀が恥ずかしそうに横を向いた。
血の気の無い幽霊のクセに頬が桜色に染まっている。
「出来ちゃったみたいなの……」
「へっ?」
出来ちゃった?
何が?
ニキビか? おできか? 魚の目か?
「……」
「……」
「産んでもいい?」
ちょ、ちょっとまてぇ~~!!
産んでもいいってなんだ?
出来ちゃったって、どういうことだ?
理解不能。意味不明。システム停止。出前迅速、落書き無用。
ナオキの脳みそはパニックを通り越して完全に崩壊した。
まず、幽霊と一発やっちゃったと言うのが既にナオキの理解を超えている。
いや、その前に幽霊なんてもんが居るって時点でほとんど信じられない。
その上、出来ちゃったときたもんだ。
更に、産んでいいかときたもんだ。
最初のコメントを投稿しよう!