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瞼を開けると目の前に男がいた。
「お、起きた起きた」
男はそう言って私から離れた。
じっ、と見られる。
私は黙ってその目を見返した。
記憶に無い顔である。
「外傷は無いみたいだけど、大丈夫?」
そう言われて、少し体を動かしてみる。どこにも異常は無いようだ。
それを伝えると、男は安心したようでため息を一つ吐いた。
「道端で座り込んでるからびっくりしたよ。なんとも無いならよかった」
男はにっこりと微笑んだ。
しかし、外見は異常なくとも、内部には異常があった。
「ここはどこですか?」
記憶がない。
自分が立っているこの場所も、周りの風景も、覚えがない。
「・・・・・・もしかして、記憶喪失?」
男が言う。
「どうやってここに来たのか思い出せません」
辺りを見回したけれど、何一つ記憶にないものばかりだ。
「君、さ。自分が何なのかはわかってる?」
男が質問する。
「はい」
それなら。
それなら記憶されている。
「XSP5030、看護型アンドロイドです」
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