Impossible

2/4
前へ
/19ページ
次へ
彼女は知っている。 わたしが酷く後悔していることを。 私が望んでいたものを。 彼女は知ってる。だからこうして誘惑するのだ。 『”彼”がやり直してくれるから』 私が成せなかったことを、わたしではない人に果たしてもらう。 わたしと彼女が作り直した世界で。 私が【あの時こうだったならば】と思ったことを修正した世界。 ”彼”はそこでなら、わたしにとっての完璧な人生を全うできるのだろうか――――そうとは言い切れないのだろうか。 『心配することは何もないよ』 彼女はまた、クスクスと笑う。 『うまくいかなければ、また別の人にやり直してもらう。それだけだよ。だいじょーぶ。痛い思いをするのも、怖いことを経験するのもあなたじゃないんだから』 嗚呼、そう。非情な女。非常識な女。自分勝手。 だけど、そう。 これも私。 彼女は可笑しそうに首を傾けて、確認するように問いかけた。 ねえ、やるでしょう?
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加