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彼女は知っている。
わたしが酷く後悔していることを。
私が望んでいたものを。
彼女は知ってる。だからこうして誘惑するのだ。
『”彼”がやり直してくれるから』
私が成せなかったことを、わたしではない人に果たしてもらう。
わたしと彼女が作り直した世界で。
私が【あの時こうだったならば】と思ったことを修正した世界。
”彼”はそこでなら、わたしにとっての完璧な人生を全うできるのだろうか――――そうとは言い切れないのだろうか。
『心配することは何もないよ』
彼女はまた、クスクスと笑う。
『うまくいかなければ、また別の人にやり直してもらう。それだけだよ。だいじょーぶ。痛い思いをするのも、怖いことを経験するのもあなたじゃないんだから』
嗚呼、そう。非情な女。非常識な女。自分勝手。
だけど、そう。
これも私。
彼女は可笑しそうに首を傾けて、確認するように問いかけた。
ねえ、やるでしょう?
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