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呼び止められて、振り返るとそこには顔のない少女が立っていた。
手先が冷たい。
身体の芯から冷えるような寒さに、わたしは背筋をぶるりと震わせた。
前も後ろも、上も下も温度も音もない世界。
嗚呼、違う。
わたしはいま、確かに【呼び止められた】のだから。
なに?
音にならない声を出すと、彼女の髪の毛が嬉しそうに弾む。
甘い焼き栗のような、暗い茶色。細くて長いが艶のある髪の毛は、毎日丁寧に手入れされている証拠だろう。
くすくすと揺れるそれを懐かしく感じるのは何故か。
顔がない。
声もない。
そんな彼女に恐怖しないのはなぜ?
首を傾げるわたしに、彼女は問うた。
『ねぇ、セカイは醜くてザンコクだね』
ちがうセカイをみてみたい?
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