Glue

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それを拭った指から、わたしの全身が紅く染まっていくのを感じる――――と言っても勿論それは飽くまで【感じた】だけであり、実際には白に近い肌色のまま。 雫を乗せたゆびさきを少しだけ睨んで、〝それ”を思い知る。 わたしが何にもない空っぽ――――否、ドーナツの穴のような存在であることを。 目を閉じると痛みが止まる。 顔のないわたしの姿も消える。 私はそこで、久しぶりの音を聞いた。
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