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ぴ、ぴ、ぴ、ぴ、――――――…
バタバタバタッ
嗚呼、スリッパは走ることを想定して作られていない。
走るなら靴を履くべきだ。
「おい?!きこえるか!オイッッ」
嗚呼、そんなに大きな声を出さないで。
私はとっても疲れてんの。
「しっかりしろっ、がんばれ!」
頑張れだなんて。
もう私に頑張りようなんてないよ。
「生きろ――――」
ガラガラガラガラ
シュゥー…、シュゥー…、
音を聞きながら、漠然と思う。死ぬんだな、と。
わたしは私の死の記憶をたどることはできても、痛みは思い出せない。
苦しかったことは憶えているけど、苦しみの何たるかは覚えていない。
私はばらばらだ。
命と体がバラバラ。
感情と記憶がバラバラ。
わたしは、私が失ったドーナツの穴。
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