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「あれ……?」
頓狂で間の抜けた声を上げたのは、一人の少年──綴 由隆(つづり ゆたか)だった。
通学路にひとり佇み、首を傾げる彼のことを気にかけるものは、誰もいない。
せわしなく行き交う鉄の塊と、コンクリートをしきりに踏み鳴らす幾多もの雑踏に、由隆の呟きはことごとく掻き消されていく。
すでに南中しかけている太陽が、これでもかと言わんばかりに熱い陽射しを投げかけてくる。
時刻はちょうど、八時十五分。
このままここで立ち往生していれば、確実に遅刻である。
しかし、由隆は立ち止まらずにはいられない理由があった。
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