携帯の画面に映っていたのは……

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「カバン、どこやったっけ……?」 今朝家を出てくるときにはあったはずのスクールバッグとリュックサックが、今手元にない。 妙に背中が軽いと思ったら手ぶらで、勉強道具もお弁当もすべて消えてしまっていた。 あるのはポケットに入っていたスマートフォンだけ。 「あれれ、いつ落としたんだろう? 画面割れちゃってる……」 ふと目を落としてみると、手のひらサイズの液晶画面に複数の亀裂が入っていた。 カバーをかけるべきだったかな、なんてことを思いながら、由隆はガシガシと手持ち無沙汰の左手で後頭部を意味もなく掻く。 ──と、前方にある交差点で、慌ただしそうに蠢(うごめ)いていたグレーや紺色のスーツの群れが、巣を壊された蟻のごとく陣形を乱している光景が目についた。 遅れて、遠くの方から唸りをあげる虎のように、サイレン音を撒き散らしながら一台の救急車が近づいてくるのが分かった。 「わわ、朝から物騒だな……」
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