保健室と先輩

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その時もなかなか治まらない腹痛に朝から悩まされていた。 原因は……わかってる。 その日は高校の入学式。 家族に祝ってもらい、親と共に高校の初日を迎えるという人生の中でもおめでたい日。 でも、私には家族がいない……という現実を嫌というほど感じる日でもある。 「じゃあ、叔母さん紗耶香の塾の送り迎えがあるから先に帰るから。帰り、一人で大丈夫よね?」 「はい」 「くれぐれも担任の先生に迷惑はかけないでね」 「おめでとう」の言葉の一つも言わずに、実の娘の紗耶香のためにすぐに帰ってしまった叔母さん。 周りの人たちはまだ家族揃って門の前で写真を撮ったり、友達が出来たりとすでに輪が出来上がっている。 「はぁ……いたた……」 そんな光景を目にすると、ますます痛みが強くなっていった。
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