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「俺の家も誰もいねーから。お前みたいに両親ともじゃねーけど、父親は昔っからいないし、母親も夜は働いて毎日いない。今日は休むとか珍しく言ってたけど、結局客から呼び出されて仕事に行ったしな」
冷めた目でどこか遠いところを見ながら、先輩は淡々と家族の事を教えてくれた。
夜は働いてるとか、お客さんからの呼び出しとか……
まだそういう知識がない私でも、何となくわかる。先輩のお母さんは、夜の世界で働いてる人なんだって。
「……」
「おい、なんでお前がショックを受けてるんだよ」
「だ、だって……今日、泉先輩は今日は誕生日なんですよね?なのに……」
「それを言うなら芹沢も明日、誕生日だろ?」
「そうです……けど」
落ち込む私を見て先輩は明るく笑ってまた、歩き出す。そして指さした先は、よく似た公団住宅ばかりが集まるある部屋の一室だ。
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