誕生日

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一定の間隔で植えられた木の遊歩道を歩き、あるコンクリートのアーチに着いた。 方向からして、ここが泉先輩のお家があるマンションだ。 「俺ん家、5階。エレベーターはないから階段で頑張れよ」 「エレベーター……ないんですか?」 「古いマンションだからな。家賃も安いし」 さっきの先輩のお話だと、泉先輩は母子家庭だ。しかもお父さんはどこかに蒸発したみたいなことも言っていた。 先輩もバイトをしてるって事は家計を助けているのかな? 先輩の事、もっともっと知りたいし聞きたいけれど、これはまだ私が踏み込んではいけない領域だ。 口をつぐんで無言のまま、私は先輩の後ろに着いて行った。 そんな私を何度か振り返って見てくれるけど、視線を合わすのが恥ずかしくて階段の段数を数えながら5階まで登った。
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