誕生日

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「お邪魔します……」 静かな家の中は、カーテンで閉め切られているから真っ暗だった。 まだ外は薄暗かったけれど、暗い部屋がまず視界に入り、足を踏み入れていいものかどうか躊躇してしまう。 「ちょっと待ってろ」 先輩はドアを閉めて鍵をかけた後、入りにくい私に気付いて先に中に入り電気を点けてくれた。 家に帰って来て、まずこの部屋を毎日見ている泉先輩の気持ちってどんな感じなんだろう。 暗くて静かで人の気配が全くない…… きっと……寂しいよね。 「何突っ立ってんだ?」 先輩はいつまでも入ろうとしない私を怪訝な目で見ている。 私はもう一度「お邪魔します」っと言って、靴をそろえた後、部屋の中へと入って行った。
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