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その喜んだ顔を見て、ある一つのちょっと図々しい事を思いついてしまった。
「あの……泉先輩」
「んー?」
まな板の上の玉ねぎをテキパキとみじん切りにしてる泉先輩の手の動きに夢中になりそうになったけれど、瞬きを何回かさせて切り出した。
「これ……こんなものじゃ、何にもならないかもしれないですけど、ないよりマシだから」
「何だよ」
震える手で卵焼きを乗せたお皿を両手で持ち、先輩の前に差し出す。
「た、誕生日プレゼント……として、受け取ってもらっていいですか?この卵焼き」
玉ねぎのみじん切りをしていた動きがピタッと止まり、キッチンに響いていた包丁の音が途切れた。
そしてみるみる苦い顔になっていく先輩の横顔。
しまった……やっぱりこんなんじゃ喜んでもらえなかったのかも。
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