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完全にそっぽむいてしまった先輩の後頭部を見て、ショックを受ける自分がいる。
ずっと忘れていた腹痛も蘇ってくるかもしれないっと、そう覚悟していたら_____
「……テーブルに置いとけよ。俺が全部食うから芹沢は一口も食うなよ」
蚊の鳴くような声だったから、ギリギリ隣にいる私にしか聞こえないほどの小さな声だった。
でも、ちゃんと食べてくれる……先輩はそう応えてくれてんだ。
「はいっ!」
先輩の声とは反対に、大きな声で返事をした。
ホッとして目尻に涙もたまったくらいだ。
それからテーブルに卵焼きが乗ったお皿を置いて、もうするべきことはない私はおとなしく和室の畳に座って先輩が料理を終えるのを待っていた。
無駄な動きがなく、洗い物と料理を同時にこなしている先輩は、ちゃんとバイトしてるんだなって思え、また先輩の新しい一面を見ることが出来て、手で隠した口元を引き締めるのに必死だった。
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