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それから10分も経たずにいい香りがこの和室に充満してきた。
包丁の音がフライパンで食材を炒めるいい音に変わり、私のお腹は急激に空腹を知らせる音を鳴らせる。
「わっ……お、お腹の音が……聞こえてない……よね?」
情けない音を鳴らせたお腹の音は、どうやらこちらに背を向けている先輩には聞こえていないみたいでホッと胸を撫で下ろした。
そしてある事に今、気付いた。
そういえば私、先輩の家に来てからいつもある突き刺さるようなお腹の痛みがない。
痛いどころか、ずっと興奮してふわふわしてる。
こんな感情、久しぶりに味わった。
そして、痛みがないっという幸せを感じたのも随分と久しぶり……
これはもう不思議に思うことは何もない。私がこんなふうに浮かれているのは、目の前にいるこの人のおかげだ。
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