先輩と2人っきりの夜

3/31
前へ
/353ページ
次へ
「別に大した理由はねーけど」 テーブルに肘を置き、テレビの画面を眺めながら先輩は普通に言い放った。 「母親が花が嫌いなんだよ。俺の父親が蒸発したときに、花を一輪だけ置いて出て行ったんだと。だから、花にはいい思い出がねーから飾るなって」 どくん……っと、心臓が重く鳴った。 先輩は平気そうに言っているけれど、間違いなく今、触れてはいけない事に触れてしまったんだと気付く。 「ご、ごめんなさい……私……」 「別に謝る事はねーだろ」 「だって……花にそんな思い出があるなんて」 「思い出っつーか……母親が言うには俺の父親も花や緑が好きな男だったんだと。だから、俺がそういうの好きなのは遺伝だって言ってたかな。 どーでもいいけどな、いない父親に似てると言われようがどう言われようが」
/353ページ

最初のコメントを投稿しよう!

943人が本棚に入れています
本棚に追加