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だから、言い出せなかったのかもしれない。
顔を見て告白するのはとても勇気がいる事だもん。
先輩が背中を私に向けている今なら、言い出せるかもしれない。
先輩のたっぷりの優しさに触れている今なら、玉砕決定の告白でもそこまで傷つく事なく結果を受け入れられるんじゃないかって思えるから。
「泉……先輩」
指先で先輩の制服のズボンからはみ出しているシャツの裾を掴んだ。
すると、先輩の方がピクリと動く。
私の心臓は小さな振動どころかとんでもない大きな音をたてている。
先輩に聞こえちゃうんじゃないかってくらい。
「あ、あの、さっきの質問の答え、なんですけど」
「し、質問?」
「はい、あの……私の好きな人の、事です」
先輩も動揺してて自分が何を言っていたのか覚えてなかったみたい。
私は震える声でその続きをゆっくりと言葉にする。
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