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肩を上下させて泣く私を半分呆れた声で笑い、頬を包んでくれた両手で髪を撫でてくれる。
私は嗚咽をこぼしながら、何とか声を絞り出してもう一度……勇気を出した。
「お、お誕……生日……おめでとう……ございます……
先輩の事……好き、で……好きですぅ……」
最後は泣き崩れちゃって情けない声しか出なかったけれど、喜ぶを表す陽気な笑い声が聞こえてきたから安心出来た。
そして先輩は一呼吸置くと、軽く私を引き寄せて抱きしめてくれた。
「芹沢も。あー……た、誕生日おめでとう……」
「……へっ?」
「おら、時計」
先輩に抱きすくめられて緊張の塊になっている私は、びくびくしながら先輩が顎で指してくれた先を見上げた。
すると、いつの間にこんなに時間が過ぎていたのか……
時計の長い針と短い針は、数字の12をさしていた。
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