オカモト家のカラフルな日々

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「ママが居ないとソファで寝れるから良いな」 ホーはそう言うとソファに飛び乗り、丸くなった。 私はソファより硬いフローリングの方が好き。 「最近、知らない人の匂いが増えて来たよね」 ホーは鼻をクンクンしながら言う。 「そうね。多分ママの彼氏の匂いなんだと思うけど」 「何年か前にもあったよね」 「うん。あの時はパパさんだよ。パパさんに彼女がいてさ。その彼女の匂い。なんか安っぽい香水の匂いだったな」 私は外を眺めたままホーに言った。 「私嫌いだったな。あの匂い」 「私もよ…。でもあれはすぐにパパさん振られちゃったはずよ。すぐに匂いも消えたし」 私はその時の匂いを思い出した。 そして吐きそうになった。 あの匂いはこの家の新築祝いのパーティをした時にやって来た、パパさんの会社の圭子って女の匂い。 誰にもわからないかもしれないけど、私たちにはわかるのよ。 だって犬なんだもん。
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