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この家における二人目の子供は父も母も本当に欲しかったのだろう、とわたしには思えるし、また知っている。……といって妹が特に甘やかされて育ったわけではないが、わたしよりも長時間、母が妹を構っていたのは事実だ。
母の愛情を妹に盗まれたと感じる典型的な長女シンドロームのように聞こえるかもしれないが、実際のところはどうだったのか。
わたしが中学生のときに亡くなった祖母の話を思い出すと、そのような贔屓はなかったようだ。
どんな親でも最初の子供は初めてなので慣れていなくて大変で二番目、三番目はそれなりに手を抜くものだと聞いているが、それは母にもあったらしい。
……とすれば、わたしの方が妹よりもずっと多くの時間を母から受け取ったはずなのだが憶えがない。
もっともそれはわたしと妹との性格的な違いによるものなのかもしれなかったが……。
妹自身は生まれたときから甘えることに躊躇がない。逆に厭うことにも躊躇がないが、負の感情が長続きしない。母の性格はどちらかというと穏やかで且つきつく、だから自分と似たような性格をしているわたしとは喧嘩らしい喧嘩をしたことはないが、妹とは日常的に喧嘩をしている。それ以上に仲の良さを見せつけられる場面もある。また幼い妹が風邪を引きかけたときには、すぐに学校を休ませたものだ。わたしの場合は、
「熱っぽいから学校に行きたくない」
と訴えると怒られる。
「ホラホラ、動いているうちに治るわよ。早く行きなさい」
と突き放される。
確かに重い頭を抱えて嫌々ながら足を前後に動かし続けて小学校に登校してみると、当時仲の良かった多くの友だちに囲まれて徐々に気分は戻ったし、下校時までには完治している。だから母の対処は、少なくともわたしに対しては正しかったことになるが、子供心に、わたしはもっとたくさん母に心配してもらいたい、と感じたのだ。
わたしが長じて初潮を迎えてからもそんな母の対応は一向に変わらず、
「病気じゃないんだから早く学校に行きなさい」
を繰り返す。
妹は生理が遅くて中学に上がってからの初潮となったが、母は大事をとって中学校を休ませようとする。結局あのときは妹自身が、
「行く」
と宣言して学校に出かけてケリが付いたが、母はわたしが高校から帰って来てもまだ妹のことを心配している。
「梓と違って茜は身体が弱いから安心できないのよ」
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