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さきをいく、銀色の人魚は、
ぼくをふりかえりもせずに、まっすぐに泳いでいく。
銀河のように輝く髪をなびかせ、
白磁の腕を、海をいだくように伸びやかに広げて、
蒼碧の玉のような鱗で覆われたひれを、優美にくねらせて、
海底の闇にうたかたの輝きをふりまきながら、
水のように、海のように、泳ぐ。
彼女はぼくをふりかえらないけれど、
決してぼくをおいて行ったりはしないと、ぼくは知っている。
ぼくは光のような、真綿のような、
ふわふわとして実体のないからだを、
漂わせ、移ろわせ、彼女について行く。
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