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彼女はふふ、と笑うと、答えてくれた。
「この海には、ここよりもずっとずっと深いところがあるわ。
そこは地上の光の届かない、絶望と安息しかない世界。
ここは、そこと地上との、中継地点のようなものよ」
(中継地点……?)
「そう。あちらとこちらを繋ぐ場所。
……わたしは、もうずっと昔から、ここの番人をしているわ。
永遠に、あちらにもこちらにも属さず、
永遠に、この宮殿に縛りつけられる」
そう言うと、彼女はひらりと身を翻して、流れのない海の水をかき分けて泳ぎだした。
ひらひらと尾びれをはためかせて、宮殿の周りを舞う。
ひらり、ふわり。
なびく髪の間から、泡がひとつ、ふたつ、立ちのぼる。
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