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「ついておいで」
人魚は言うと、正面の門から宮殿の中へ入る。
ぼくはあわててその後に続き、そして息を飲んだ。
(わあ……!)
外観こそ絢爛豪華な装飾をほどこされた宮殿だが、その金の門の内には、異様な世界が広がっていた。
床には、ぼくと人魚が入ってきた門からまっすぐに、紅いカーペットが敷いてある。
そのカーペットに沿うように、両側にはずらりと並ぶ、
扉、扉、扉。
アラベスク模様の扉が、床のカーペットとともに、ずっとずっと先まで続いている。
建物の中に入ったはずなのに、まるで果てなどないかのように、延々と。
あとはただ一面に、純粋な闇が広がっている。
(この扉はなに?)
ぼくは、人魚に訊いた。
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