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「ふふ、びっくりした?
この扉はね、一つ一つが、あちらの世界につながっているの」
(あちらの世界……?)
「そう。
一つは『森』というところに、
別の扉は『街』というところに。
また別の扉は『砂漠』というところに、
その隣の扉は『荒野』というところに。
この宮殿は、世界のどこへだって通じているのよ」
(すごいね! じゃあ、永遠にこの宮殿にいなくちゃいけない人魚さんも、退屈しないね)
自慢気に話す人魚に、こちらまで嬉しくなり、ぼくはついはしゃいでしまった。
けれど言ってしまってから、ぼくは
(しまった)
と思った。
人魚の顔が、そのとき悲し気にゆがんだからだ。
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