0人が本棚に入れています
本棚に追加
ぶくぶく。
そんな音をたてて、突然、深海を漂っていた泡が、ぼくの周りに集まりだした。
ぶくぶく。ぶくぶく。
集まってきた泡はぼくをもみくちゃにして包み込む。
手足などないふわふわとした綿毛のようなぼくは、なす術もなく泡に飲み込まれていく。
うごめく泡の中から、驚いたような人魚の顔が見えた。
ああほら、人魚さんが困ってるじゃないか。
はやく泡をふり払って、大丈夫だよって、頭をなでてあげなくちゃ。
そう思ったとき、ぼくは気づけば手を伸ばしていた。
ないはずの腕を、たしかに人魚に向けて伸ばしていた。
ぼくの腕が、人魚の絹の髪に触れていた。
いつの間にか、ぼくは人間の少年の姿になっていた。
最初のコメントを投稿しよう!