降車駅

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「ところで少年、このあたりのおすすめスポットを教えてくれたまえ」  食べているうちに溶けきって液体と化した残り三分の一のかき氷を喉に流し込んで、あたしは尋ねた。 「おすすめスポット? 観光できるようなところなんかねぇよ」 「いや、観光とかではなく。……そうだなぁ、じゃあ、たとえば、君が一人になりたいときに行く場所、とか」 「そんなの、普通に俺の部屋」 「お、大胆だねえ」  にまっと笑って少年を茶化すと、少年は「あ、いや、……べつに、部屋来いって意味じゃなくて」と、怒ったような顔でぼそぼそと言った。 照れてる照れてる。 実に中学生らしい。 「えーとじゃあ、君がよくぼんやりする場所、とか」 「あんた何がしたいんだよ」 「穏やかな気分になりたいだけだよ。ストレスフルな現代社会に生きるあたしたちなら、当然持ち合わせている願望じゃないかね」
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