降車駅

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「おっさんくさ」 「あ、君、今おっさんを馬鹿にしただろう」  駄目だよー。日本社会は半分以上はおっさんが動かしているんだから。 そう言うと、少年は「ハイハイ」と、うんざりしたような顔で言った。 そして、駄菓子屋に引き返すために通った道へ、おもむろに歩き出す。 「少年、どこ行くの?」 「……俺がよくぼんやりする場所、行きたいんじゃなかったの」 「え、連れてってくれるの? どこ?」  小走りで少年の隣に並んで、あたしは少年の顔を覗き込んだ。 すると、少年は短く、「川」と答えた。 「川! あたし、中学の修学旅行で行った京都の川しか見たことない!」 「鴨川?」 「違う。大堰川。嵐山の」  あぁ、そっちか、と、少年はつぶやいた。  そう、そっちだ、と、あたしもつぶやいた。 「そんな立派な川じゃねぇよ、この町の川は。あんま期待すんなよ」 「おっけい! 期待しとく!」 「話聞けよ」
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