降車駅

19/26
前へ
/26ページ
次へ
 平面的な笑い声は真昼の太陽の熱で溶けて消えた。 誰もいない、静かな河原で、水の音だけがあたしたち二人の間を流れていく。  沈黙。 長い、長い、ようなそれは、長い気がするだけで、実はそれほど長くはないのだろう。 「でも俺も、そういう気分になりたくなるとき、あるよ」  その静けさを破って、少年はそんなことを言った。 「うん。だろうね」と言って、あたしは笑う。 今度は立体的な笑い声で、「馬鹿みたいだよねぇ」と。 「特別辛い境遇なわけでは決してない。特別悲しいことがあったわけでは決してない。それなのに、ときどき意味もなく寂しくなってみたり、悲しくなってみたり焦ってみたりする」 「……うん」 「誰だってさぁ、わかってるんだよね。そういうあたしたちのヘンテコな孤独感とか焦燥感って、この年頃の少年少女は誰でも持っていて、特別なものなんかじゃないんだ」
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加