降車駅

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 こんなこと、誰にも言ったことがない。 でもずっと思ってて、吐き出したくて、――だからあたしは、誰もあたしを知らないところに行きたかった。 「そんなたいした悩みじゃないってわかってるのに、あれこれ悩んで、悩むためだけに余計にテーマを考えたりなんかして、ほんと、馬鹿げてる」  ずっと胸にためてきた思春期特有のヘンテコな辛さを、皆はどうやって消化しているのか知らないけれど、あたしは、吐き出さないと爆発してしまいそうになる。 だから、こんなところまで来て、誰かにゴミ箱になってもらいたかった。  受け止めてもらえなくていい。 理解してもらえなくていい。 慰めてくれなくていい。  ただ、話を聞いてくれれば、それで。 「そういうの全部わかってるのにさ、……わかってても、辛いのは消えないんだよね」  長い長いあたしの唐突な独白を、少年は黙って、じっと、キラキラ光る河面を見つめながら聞いていた。 話し終えてもその目は河面の光をぼんやり見つめていて、聞いていたのかな、と、ふと不安になる。
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