降車駅

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「あるよね! あたしなんていてもいなくても変わんない。料理の付け合わせのレタスと一緒。って、そんなことでグルグル悩んだりね」 「なに、その意味わかんねぇ例え。それにレタスなめんなよ。あいつは彩りを添えてるって点で役に立ってんだよ」 「あ、そうか。これは失礼」  あたしたちは顔を見合わせて、同時に吹き出す。 互いに名前も知らないけれど、こうやって笑い合うことはできるんだ、と、妙なところに感動を覚えた。 「さてと、」  ひとしきり笑ったのち、あたしは言って、立ち上がった。  時刻は二時半。帰りも四時間はかかるはずだから、家に着くのは七時頃か。 仕事から帰ってくる父と母よりも早く家に着くかどうかは、五分五分といったところだろうか。 「あたし、そろそろ帰らないと。少年、駅まで案内してくれる?」
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